こんにちは!
カイゼン研究会の宇賀です。
「生産計画以上には作ってないから大丈夫」
「予測でなくてオーダーが来たものだけ作っているからね!」
7つのムダの中でも「造り過ぎだけはしてないよね」というのが研修やプロジェクトを通してよく聞く反応です。
おっしゃることはその通りで、生産計画や受注は100台だけど、何かあった時のために120台作ってやれ。
ということは稀だと思います。
しかし、造り過ぎのムダで本当に注目すべきなのは、
必要数以上に造るという量の問題ではなく、
早く造り過ぎているというタイミングの問題を探すこと
です。
造り過ぎ、と聞くと完成品や倉庫をイメージして「造り過ぎのムダはない」となりがちですが、
それよりも、各工程ごとに早く作り過ぎていないかということを見ていくことで発見するものです。
工程の流れ化が大事だ
1個流し生産が理想だ
というのを製造業に携わる人ならどこかで見たり、聞いたりしたことがあると思います。
最初はなんとなく、なるほどと思うのですが、人に説明してみろ、と言われると
「1個流しの何が良かったんだっけ?」
と言い淀んでしまうくらいに腹落ちしきれていないということはよくあります。
(私もそうでした)
早く造り過ぎず、後工程が必要な時ぴったりに造り渡す。
モノが動いていない状態である停滞時間を最小限にする。
これの理想の姿が1個流しなのです。
早く造るというのは大ロットの生産にも当てはまります。
大ロット生産は必ず停滞を生み出します。
例えば、
<プレス工程は1ロット1000個で、組付工程では1台ずつ作る>
とすると、2つの停滞を生み出します。
1つ目は工程待ちによる停滞
後工程に運ばれた後も、組付けでは前のロットをまだ使用しているので、使い切るまで1000個が停滞します。
2つ目はロット待ちによる停滞
後工程でやっと使用され出しても、1個ずつ使うので999個は停滞したままということです。
なので、1個ずつ作り後工程と同じタイミングで渡すことが理想的だとなっています。
基礎となっているジャストインタイムという思想は、これらの停滞をなくしリードタイムを短縮することを目的としています。
ここでもリードタイム短縮は作業や加工スピードをあげることと捉えられてしまうことが多々あります。
しかし、実際は工場の生産リードタイム、モノの動きの中で加工、検査、運搬、停滞という状態がありますが、
多くの割合を停滞が占めています。
それをどうやって減らすかがリードタイム短縮で目指すことになります。
・リードタイム短縮のためにモノの停滞を減らす。
・モノの停滞を減らすために、早く造り過ぎていないか探す。
そして、なぜ早く造る必要があるのかという部分が、カイゼンのポイントになってくるという流れです。
例えば、1ロット300個を5時間で作る工程があり、同じ生産方法の工程を3つ続けると完成するとします。
この場合のリードタイムは5時間×3工程の15時間となります。
しかし、ロットごとではなく1個ずつ流すと5時間2分で出来上がります。
極端な例ではありますが、停滞を減らす、ロットを減らして早く造り過ぎるのを防ぐというのはリードタイムにこれだけ影響があるのです。
そして工程が増えれば増えるほどその効果は増えていきます。
もちろん実現するためには解決すべき課題もあります。
運搬の増加や段替えの増加です。
そこから運搬を減らすためのレイアウト見直しや、小ロット生産に対応するために段替え時間の短縮を進めることになっていきます。
これらを進めないとリードタイム短縮による生産性(アウトプット/インプット)低下は避けられません。
なので肝になるのですが、工場がフル負荷でない限り、リードタイム短縮の方が会社にもたらす利益が多いです。
長々と書きましたが、造り過ぎのムダというのは早く造り過ぎている部分を探すことがカギになります。
早く造り過ぎることで仕掛品停滞、ひいては全体のリードタイムに悪影響を与えます。
一見、完成品は生産計画通りできているように見えますが、
工程全体で見ると1個の製品ができるまでの時間はまったく速くなっていないどころか遅くなっていること、
がどこの工場でも知らない間に起こっているのです。
早いうちに、大ロットで作る方が生産管理、出荷管理、製造当事者にとってはリスクがなく仕事が楽ではあるのです。
(生産性も上がっているように見える)
その代わり、リードタイム、仕掛品在庫という、見えにくいけど原価に悪影響を与えるものが犠牲になります。
本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
