こんにちは!
カイゼン研究会の宇賀です。
ここ数年
「物流クライシス(危機)だ!」
「運賃の高騰が止まらない!」
ということが話題となっておりますが、加えて直近のインフレーションにより目に見える形で顕著に値上げの影響が出てきている物流の問題が本日のテーマです。
製造業や貿易にとって利益の源泉は
(1)売り上げの拡大
(2)製造、仕入れ原価の低減
(3)物流コストの削減
とも言われますが、営業側は(1)に注力し、生産側は(2)を努力する、という優先順位で企業は運営されており物流が主役に躍り出ることは少ないです。
しかし、日本でも中国でも更なる売り上げの拡大が難しくなり、加えてどの国も長期的に見ればインフレ、物価は上がっていくので、原材料や人件費、生産コストは上がっていくことが自然な流れです。
そんなトレンドの中で、物流の優先順位が上がってきているのが現状です。
実際に日本を見てみると、物流サービス価格は2015年の価格基準を100とすると、道路貨物輸送で110以上、宅配便で125以上と急激に高騰しています。
さて、物流の問題には企業単位のミクロの問題と経済全体でのマクロの問題があります。
ミクロの問題は、なぜ企業(メーカー)にとって(3)物流コストの低減の優先順位が低いか、という理由につながります。
それは、物流会社とメーカーで役割が分担されているからです。
メーカー内にすべての機能を持っている大企業は別ですが、基本的にロジスティクスは物流会社に任せている企業が多いと思います。
そして、弊社にもよくある問い合わせとして
「物流倉庫をカイゼンしたい」
「物流会社と協力して効率化してほしい」
「倉庫会社がカイゼンに積極的でない」
というものがあります。
しかし、基本的には荷主(メーカー)と物流会社はトレードオフ関係になっています。
物流会社からすると、頑張って効率化してもその利益は荷主に還元されてしまい、インセンティブがありません。
荷主としても、物流会社の作業内容に詳しくないのでもっと効率よくできるのではないのか?
と十分な根拠なく価格改定を迫っているのが現状と思います。
この契約関係のままではカイゼン、効率化による物流会社へのメリットが少ないので、改革しにくいということです。
そこで、欧米から登場してきたのが、
サードパーティーロジスティクス3PL
という形態で、荷主の物流戦略、カイゼンを考えるところも仕事の一部だとするものです。
そして、ゲインシェアリング方式という契約形態で出た利益を荷主と物流会社で折半していく、という形態が注目を浴びました。
もともと課題だった物流会社へのインセンティブを追加した内容です。
しかし、まだ普及しているとは言えず、物流業務の委託、荷主を含めた改善提案等の高度な提携、協力体制の構築が必要になるので、メーカーとしても大きな経営判断が必要になるのも理由の一つです。
そして、欧米でも日本でも課題となっているのは、利益配分の透明化、基準の設定、コスト算出、評価方法の設定と、やはり日本では特にコスト削減効果は荷主に還元されるべき、という考えから物流会社に納得感のある配分にならないという現状もあります。
なので、このミクロの問題はまだまだベストプラクティスが見えている訳ではないということです。
次に日本で言うところのマクロの問題は、需要面は多品種、小ロット運搬による搭載率の低下、これはネットショッピングの普及なども影響しています。
そして最も大きいのは供給面の問題です。
高齢化によるドライバー不足、及び2024年問題と呼ばれるトラックドライバーの時間外労働規制です。
増えていくに量に対して、ドライバーが不足していくということがマクロでの問題となっております。
それに加えてカーボンニュートラル等、CO2排出規制も今後物流供給の制約になると言われています。
こういった問題に対して、政府も入りながら物流の企業間協業の推進が行われており、メーカーや卸が協力し、物流(運搬や倉庫)は共同で管理していこうというプロジェクトが進んでいます。
各社がリードタイムを犠牲にしても物流資源を共同で使おうという試みです。
そして政府もそれのさらなる拡大版ともいえるフィジカルインターネット構想、2040年までのロードマップというのを2022年に出しています。
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220304005/20220304005-1.pdf
経済産業省
まだまだコンセプト段階なのですが、このマクロの問題に対応するため今後の物流のトレンドとなっていくはずです。
日本では他国に先駆けて問題に直面しておりますが、同様の問題は今後中国でも起こると考えられます。
そしてまだまだ物価、人件費の高騰が続く中国でも物流コストの重要度は増しています。
また中国は日本、アメリカと比べてGDPに対する物流コストが高いことでも知られているので、企業として物流コストの改革にいち早く取り組めれば、それだけ享受する効果も大きいということです。
■GDPに占める物流コスト比率
・米国7~8%
・日本9~10%
・中国14~15%
今回は物流、ロジスティクスにまつわるトレンドについての内容でした。
製造業における物流の重要性を上げて現状どうなっているかを考えるきっかけになればうれしく思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
