トヨタ生産方式の中国での誤解

こんにちは!

 

カイゼン研究会の宇賀です。

www.a-solsh.com

 

今回のテーマは「トヨタ生産方式の中国での誤解?」です!

 

中国各地の工場を訪問させていただく中で中国人経営者の方や、工場長の方と話す機会がありますが、生産関係出身の方でなくてもトヨタ生産方式(以下TPS)を勉強されている方が多く毎度頭が下がります。

 

「かんばんを使うんでしょ!」
「ジャストインタイム(必要な時に必要な物を必要なだけ)」
トヨタは在庫ゼロなんでしょ」

 

関連書籍もたくさんあり、様々な用語もさることながら在庫削減、ジャストインタイムを中心として書かれているものが多いので、
トヨタ生産方式=在庫ゼロ、ジャストインタイム

という認識で、だから導入したいんだ!という相談をよく受けます。

 

おそらくこれが中国でのTPSの認識で、自ら勉強して、自力でそれを進めようとしたときに
「中国の仕入れ先や物流ではこの本に書いてあることはできないよ。。」

「この製品ではジャストインタイムは無理だ。。」
とあきらめてしまう、ということが起こるのです。

 

しかし、これはすごくもったいなくて、せっかくやる気もあり、工場を何とかしたいと思ってトヨタのやり方を勉強して何か変化を起こそうとしたのにもかかわらず、

トヨタ生産方式=ジャストインタイム、在庫ゼロ

という誤解のせいで、中国のビジネス環境もあり途中で挫折してしまっているのです。
(ちなみにトヨタでも在庫ゼロではないです。これは日中関わらずよく聞かれます。)

 

本来のTPSは経営的な考え方とニンベンのついた自働化に支えられているものです。

 

そこがなければテクニックのようにとられてしまい、「中国ではこういう理由でそのテクニックは使えない!」となって終わってしまうのです。

 

そうならないように今回はTPSを簡単に説明していきます。

 

まず企業の目的は何か?から始まります。

 

それは「お客様にモノやサービスを提供し利益を上げ、存続し続けること」

 

やはり良いモノやサービスを作っても利益が上げられないと、その企業は存続できず、お客様に提供することができなくなってしまいます。

 

それでは企業としての使命も果たせないので、利益を上げ続けることが大切です。

 

企業の目的がはっきりした後、利益とは何か?どう増やすのか?ということで

1.       売値=原価+利益

2.       利益=売値−原価

2つの計算式のどちらを目指すかという問いになります。

 

トヨタでは2が採用されており(①は原価に欲しい利益を乗せて売値は自社で決める)、売値は自社でコントロールできず、お客様が決めるモノ、そして、利益を増やすために自分たちができることは原価を下げることしかないんだ、というのが原価低減が仕事と言い切る理由になります。

 

ではどうやって原価を下げるか?という問いがあり、それは
ムダを探し、取り除くことの徹底こそが仕事。
と続きます。

 

後に7つのムダなどに整理され、誰でもムダを認識できるような用語になっていきます。

 

■正味作業                         付加価値のある作業
■付加価値のない作業         必要な作業
■ムダ                                不必要な作業

 

このムダを取り除くことが、原価低減につながり、利益を増やし企業の目的も達成できる。

 

だから生産を日々することだけではなくムダを取ることが仕事なんですよ。

 

ということがトヨタ生産方式の基本になります。

 

そして製造業の仕事の定義をこのTPSの考えに変えていくことが日中関係なくTPSを取り入れることの成果です。

 

その基本的な考え方があったうえで

 

1.ジャストインタイム                   →リードタイムの短縮

2.ニンベンのついた自働化             →異常があれば止まる、止める

 

というTPSの2本柱という原価低減をし続けるための問題を見つける切り口があります。

 

この2本柱はどこまで行っても達成することが難しいあるべき姿であり、これを掲げることであるべき姿と現状のギャップ(問題)が生まれ続けている状態となるので、カイゼンの切り口となり、原価低減がし続けられるという仕組みです。

 

そしてそれをカイゼンしようとした歴史の中で、かんばんやアンドンというツールが生まれてきたのです。

 

だからかんばんが使えないから、在庫がゼロでないから、物流が時間通りでないから、TPS導入に失敗するということではなくて、経営的な考え方に立ち戻り小さくてもムダを取ることができ、それを仕事として全うしそれが評価されるような経営ができるようになれば、課題の大小はあってもTPS導入のスタートはできているはずなのです。

 

そして中国では2のニンベンのついた自働化を進めることが、ジャストインタイムより重要だと考えています。
(中国のビジネス環境にも左右されにくい)

 

こちらの異常というムダを見つけカイゼンが新たな仕事として組織として基本的にできるようになり、それが評価される状態になった後に、ジャストインタイム(リードタイムの短縮)の方に力を入れる順番となります。

(アマゾンの倉庫オペレーション改善もニンベンのついた自働化の考えがまず導入され、異常、ムダへの対応から考えられてします。)

 

長々と書いてきましたが、中国でのカイゼン活動を始める際に、TPSの経営的な考え方とニンベンのついた自働化の重要性を知ること。

 

そしてそれを絶えず誤解の無いように伝え、経営としての制度、従業員の仕事に組み込むことが活動を長く続け、企業の文化としていく過程で必要になるということを書いてきました。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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