<現場カイゼン通信>上海ロックダウンと犠牲-トレードオフについて考える

こんにちは!

カイゼン研究会の宇賀です。

思い返すともう3年程前のことなのかと驚きですが、ご存知の通り、私の住んでいる上海ではコロナウイルス蔓延防止策として市を丸ごと封鎖し、家からも出てはいけないというロックダウン政策がとられました。

人がすべて動けないという状態なので、サービスの提供者もいなくなりロックダウン前には必要物資の買い占め騒ぎが起こったりするなど生活には大きな影響を与えました。

こういう状況で過ごしていてふと、昔の上司の言葉を思い出しました。

「犠牲にしたものは何ですか?」

これだけ聞くと、すごく怖い言葉なのですが。笑

以前の職場で問題解決や対策、効果を報告した時に必ずこの質問が飛んできました。

すごく簡単に言い直すと

「その対策の背反は何ですか?」

「トレードオフは何ですか?」

という意味です。

意図としてはその対策をして失ったもの、損したものも必ずあるはずだ。

きれいな問題解決に見えるが悪くなった面も教えてくれ、ということです。

当初は

「まあ対策にもお金がかかったりするしそういう質問が出るのも当たり前かぁ」と浅はかに考えていたのですが、

だんだんそのトレードオフ、あちらを立てればこちらが立たずの状態、を理解していることがどれだけ重要かということに気づいていきました。

(1)必ずトレードオフはある

(2)2軸を見つけてからもう一度対策を考える

この2点で話していきます。

(1)必ずトレードオフはある

まずトレードオフを見つけるためには頭の中で2軸に気づく必要があります。(X軸とY軸)

こう説明すると難しく見えますが、普段からみんなやっていて、例えば製造業で言うと加工材料を新しいものに変更したときに、コストは下がるけど出来高(可動率)が下がってしまう。

軽くはなるけどコストが上がってしまうなどがあります。

製造業だけでなくほとんどの選択はこのトレードオフが存在していて、それを比較して判断されます。

ここが大事な理由は成功の基準が描けていないと2軸にも気づけないからです。

どうなったら誰がうれしいか?

どうなったら成功か?

ということをわかっていなければなりません。

こう説明していくとなんだ、当たり前じゃないか!となりますが、私たちは知らず知らずの間にお金や時間といったコストや収入の一軸で考え対策する癖がついています。

問題解決も基本的にはそのコストを最小化するような方向の対策になっており、結果だけを見るとうまくいっているように見えます。

しかし、対策前に想定できるものもあればやってみて初めて分かる背反というのもあります。

「コストは下がったから」

「不良率は下がったから」

「停止が少なくなったから」

というような1軸で判断してしまうと、そこで終わってしまい頭を使わなくなり、簡単な対策で済ましてしまうのです。

(コストは下がったけど製造現場で不便を生んでいる例はよくあります。)

(2)2軸を見つけてからもう一度対策を考える

このトレードオフを理解せずに対策のアイデアを出しても自分の慣れた考え方や直観に従うだけになってしまいます。

そうではなくて、発見したトレードオフという道具を使って初めて

それをどう乗り越えるか?

どうしたら両方満足できるか?

そもそも本当にトレードオフなのか?

と考えを進めることが可能になり、良い対策や新しい取り組みにつながります。

特に時間軸を変えてみたらトレードオフではなくなったり(短期的には損だが、長期的には良い)、定義を広げたり、縮めたりすると対策のアイデアが浮かんだりすることは良くあります。

(2軸をコストと不良率としていたが不良率が上がるのは特定の品番だけ特定の条件下だけだったなど)

さらに良い案がないか考えるためにはトレードオフの存在を理解していないといけない。

それに気づかせるために上司は「犠牲にしたものは何ですか?」と問いかけてくれていたのだと思っています。

すべてを満たす回答がなかなかないのも事実です。

企業はお金という軸での判断がしやすいですが、個人や政府ももちろん様々な軸のトレードオフに直面しながら選択をしていきます。

そして最終的な判断はその決定者の軸の優先度(理念の強さ)で決まると思っています。

どれだけコストがかかったとしても安全を守るんだ!

自由を最も優先するべきなんだ!

経済の成長を止めないためならリスクは取るのだ!

もちろんバランスを見た判断が多く極端なものは、政治でもビジネスでも少ないですが、多少なりとも何かを犠牲にする判断はその決定者の理念が反映されているように感じます

長くなりましたが、本日はロックダウンを機にトレードオフについて考えてきました。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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