こんにちは!
カイゼン研究会の宇賀です。
今回のテーマは政府も頭を抱える「組織の意識改革」です!
以前、中国政治家の反腐敗活動をテーマにした「人民的名義」という中国ドラマにはまっておりました。
反腐敗を掲げる検察局と省の書記、副書記
市の書記、警察庁
国営企業
利権に群がる民間企業
政治的、経済的な利害関係が複雑に絡みあいながら頭脳戦が繰り広げられるという見ごたえのある政治ドラマです。
(実際に起こった事件をかなり脚色された作品のようです。)
日本とは行政の組織がかなり違うということと、省や市、区の登場人物がみんな書記と呼ばれているので、
誰が偉いのか?を理解するのに時間がかかります。
誰が誰かわからない。。難しい
こう説明していくと、自分が全く知らない政治という世界のドラマなのですが、
ところどころに自分たちの世界とも共通する役人の日常の困りごとや、悩みが描かれていて
外国人の私から見ると新鮮だったり、意外な共通点を発見したりする時があり、
見れば見るほどはまってしまいました。
その中で出てきて特に面白かったのは「部下の仕事に対する意識」について、書記が悩むというエピソードがありました。
「部下の仕事に対する意識」
このテーマは自分の仕事の中でも問い合わせやご相談を頂くことが特に多い悩み
・社員の仕事や会社に対する危機感
・安全意識が低い
・品質への意識が低い
・コスト意識を持っていない
などなど、これは日本でもよく言われる問題で茹でガエルにならないために様々なことが考えられています。
(トヨタでも社長が10年くらい言い続けており、役員体制や給与制度の見直しなど制度改革が毎年行われています。)
そして中国という文化の違いもあり、赴任された方は、日本にいた時より強く感じると思います。
しかし、安心してください。
そんな捉えどころなく、大きくもやもやとしたテーマを中国ドラマの中で共産党の組織内の問題として扱っていたのです。
(中国ドラマは放送前に政府による内容の検査が入るので、ドラマで描かれている共産党内への批判は、政府から見ても真実味があるのではないでしょうか。。)
私の党に対する勝手な印象は、権力構造や役割が明確でトップダウンで瞬時に全体が動く組織だと思っていました。
しかし、実は企業と同じ悩みを持っており、それを何とかしようとするリーダーの姿が描かれていたので親近感がわきました。
(すごく共感できる部分だらけ。)
例えばドラマ内のワンシーンを見ていきますと、市の書記(トップ)の李のもとに李の親戚のおばちゃんからクレームが入ります。
おばちゃん
「区役所の人間は国民のことを何だと思ってるの!?あの窓口は国民をなめてるわ、あんな窓口で誰が相談したくなると思うの?だから役人は尊敬されなくなるのよ!一回自分で見てきなさいよ」
急にクレームを言われた李市書記はその区役所をこっそり視察しに行きます。
すると、相談窓口の高さが中腰の体勢でないと相談できない高さになっており、そのうえ椅子も設置されておりません。
だから役人に相談しようとすると、空気椅子のような無理な体勢を維持しないといけない作りになっていました。
(窓の内側の役人は椅子に座って偉そうに対応しています。)
隠れて視察するはずだったのですが、様子を見て腹を立てた李書記は区長を呼び出します。
李書記「お前はこれを見て何も思わないのか??」
区長「いたって正常ですが、何かありましたか?」
李「この窓口を通して俺に相談してみればわかるだろ!」
区長「確かに使いにくいですね。しかし、この高さにしたことで相談時間が減り、書記の指示通り業務効率がアップしました!」
李「それは区民のためになっているのかよく考えろ!!すぐにでも区民が使いやすい窓口に変更しなさい!!」
区長「わかりました!しかし、今は予算がないので変更は難しいと考えます。どうしましょうか?」
李「いくら必要なんだ?」
区長「壁の建て替えを含めて、50万元ほどだと考えます」
李「!?もっとちゃんと考えろ!目的は区民の相談しやすい窓口にすることなんだぞ。。どうして壁を建て替えないといけないんだ。椅子を置けば良いだろ!頼むから頭を使ってくれ。なんでもお金で解決しようとするな!」
区長「では、どうしたらよいでしょうか??何か他に指示などはありますでしょうか?」
李「例えばだな、、銀行の窓口を見てみろ。お客様にリラックスしてもらうために窓口に飴を置いたりしているじゃないか。そういうことがお客様のことを考えるということだ。ってなんで、窓口のことまで俺が考えないといけないんだ!!自分で考えろ! 3日以内だ!」
区長「了解しました!3日は厳しいので1週間以内で何とかします!」
李「なんで1週間いるんだ!まあいい、ちゃんと考えろよ!」
李書記は部下にあきれながらも、改善指示を出してその場を去ります。
その1週間後省の書記がたまたまその区役所を訪れます。(省の書記の方が偉い)
相談窓口には、高さの合っていない椅子と汚い皿に乗った飴玉が置かれていました。
その様子をを見た省の書記は市の李書記を呼び出します。
省書記「この窓口に座ってみたまえ。何も思わんか?」
李書記「・・・」
李書記は区長が自分の指示のうわべだけを聞き、何も自分で考えることなく安い高さも合っていない椅子と汚い皿に飴を置いただけの状況を目の当たりにします。
そして共産党員としての区長のふがいなさに悔しくて涙してしまいます。
(李書記は仕事熱心で人民のために動く書記の鏡として評価されている人物です)
省書記も李書記の努力を理解しており意識の低い部下が多いことを嘆きますが李書記に同情はしません。
省書記「こういうところから腐敗は始まるのだ!君ならなんとかできるはずだ!報告を期待しているよ。」
李書記「わかりました。私の責任範囲でこのようなことが起こりすみません。」
このシーンはユーモアも交えながら描かれており、そんなことも自分で考えれない役人がいるのかと視聴者は一緒になって笑っています。
しかし、こんな状況は現実の企業でもよく起こっていることそのものです。
(指示待ち、考えない、意識が低い等)
それが共産党内でも起こっているという皮肉を交えて描かれています。区長はもう上に上がることができない立場のため、意識も低く手を抜いているという背景があります。ぶら下がり党員の問題として扱われてます。
しかし、まずこのシーンでやはり違うなと思うところは李書記は自責で考えています。
「私はちゃんと指示を出しました。でも区長は・・・」
というようなことは言いません。
言ったら評価が下がるし、自分の存在価値がないことを認めてしまう。
しかも、省書記を含めそれが共産党内の幹部の当たりまえの認識であり、それを言わさない文化がある。
というところはやはりさすがだと感じました。
(ちゃんと上からの指示が自分の宿題として残るし、指示を出しただけで変化がなければ価値がないとされている)
そしてこの大きく難しい問題に対して
「李書記はどうするのか??」
をものすごく期待して見ておりました。
李書記は部下の意識の低さを問題として、
区長全員を一部屋に集め党員とは何か?人民のためにはたく自覚とは何か?など
党員の再教育を自分で企画し週2時間自らが講師となり実施するという行動に出ます!
理想論を語りそして、文句があるやつは自分から辞めろというパワープレイで、区長以下に危機感を植え付けるということをしました。
そしてその再教育講義の様子をビデオに録り、省書記に送るということを対策としました。(省の書記は満足げに様子を見ています。)
対策の是非はありますが、省書記からの信頼はあるということを前提にすることで部下から反発を食らうこの対策を自らの手で実行していきます。
部下も辞めるかやるかを迫られるのですが、区長くらいの位置の人は辞めても次がないので従うしかないという構造です。
しかし、省の書記からの信頼がなければ、部下や省書記からの裏切りを食らう可能性がありますが
明らかにそれはないと判断して、強硬に変化させる行動をとっています。
ドラマなのでかなり脚色されておりますが、実際に意識の変化という問題を扱おうとするとこのくらいの覚悟や降格措置などのダメージがあるものだと思います。
しかも、実際の対策は意識を変えるというよりも強制力を持って行動を変える(週に一回の再教育出席)ことです。
やはり、意識変容→行動変容と考えがちですが、行動変容(強制、ルール、多数決など)→意識が変わっていく
というのが取り組む順番としては正しいと思います。
学校などでもそうですが、トヨタも入社して意味も分からないまま行動の型を強制され知らないうちに自分の考えや意識に浸み込んでいく順序です。
例えば、最初から毎日4Sの時間があり、やっているうちに意味を覚えていく感じです。
少し話がそれましたが、こういうことを踏まえて考えても意識が低いや危機感がないなどの問題に対して平時に自発的な変化を求めるのは相当難しいことです。
言葉で危機をあおっても限界があります。
工場の例で言うとすごく好況で、作った物がどんどん売れていく様な時に在庫はだめだ、在庫を減らしましょうと言ったところでなかなか気づかないのです。
売れるのに何がもったいないのか?機械を止める方がもったいないでしょ?と普通ならなります。
しかし、不況で実際に危機が訪れたときにはじめてその大切さ、変化の重要性を痛感します。
後悔しながらも後に戻れないので必死になります。トヨタでさえも、リーマンショックまではそうなってしまっていた。
だから、組織の意識を問題として平時から準備していくためにはトップと幹部が部下にとって危機となる状況、行動を変化せざるを得ない状況の設計を覚悟を持ってできるかが肝になってきます。
(好況のうちから仕込んでおかないと間に合わない)
表面上だけの取り組みにならないためにもまずは、理解のある人、能力のある人、見込みあると思った人だけで活動を始め、しっかりと変化を評価し次にその部下が信用できる部下を集め徐々に広げていくことが必要になってきます。
ドラマの中でも省書記は、李書記に見込みがあるからあえてプレッシャーをかけ、対策を出させました。
そして李書記は自分の手に負えそうな人数(区長)を集め、自ら教育の講義をしていくということをしました。
これは、李書記は部下に不満を持っているかもしれないけども、
結局は変えるような行動は何もしていないじゃないかというのが省書記から暗示されています。
こういう部下の意識の問題などは効果がわかりにくいですが、どれだけ新しい企画をし行動をしたかが一つの基準になってくると思います。
それで本当に意識は変わったのか??など正しさを検証しだすと何もできなくなります。
好況、平時の時こそ来るべき時の準備のために新しい行動をせざるを得ない危機感と活動を仕込んでおくことが重要です。
長々と書きましたが最後までお読みいただきありがとうございました!