こんにちは!
カイゼン研究会の宇賀です。
今回のテーマは「演繹法と帰納法??」です!
題名は何か小難しい感じがするのですが、実際は生産現場でのカイゼン活動やカイゼン教育を進める中で、
現場のリーダーたちはどのように考え、学習し、自分で使える知識となりそして、部下に教えれるようになっていくのか?、
ということを考えてみよう!というのがテーマです。
今回はどのように考えを進めていくかですが、今回のテーマの中でまず
(A)人はどのように考えたり、いかにして知識を得るのか?ということを考え、
(B)それが生産現場(カイゼン活動)ではどうなのか?
(C)工場で学習が進み、知識が根付くためには?
という風に進めたいです。
では(A)人はどのように考えたり、いかにして知識を得るのか?から調べてみました。
(哲学でいう認識論という分野でこの問題をいろんな人がすごく考え続けていたようです。。すごい笑)
そしてたどり着いたのが、演繹法と帰納法
基本的にはこの2つが考える方法の基礎となっているということです。
(名前を知らなくてもおそらく無意識にやっている)
まず演繹法ですが、普遍的事実(誰もがわかる知っている事実、原理、原則、ルール)というものを前提とすることでそれを出発点にして、ほかの事実と結び付け、結論を出すというものです。
よく出る例でいうと、
■普遍的事実 人間は必ず死ぬ
■事実 ソクラテスは人間である
■結論 ソクラテスは必ず死ぬ
普遍的事実をもとに、事実や観察したことを結び付け結論を出しています。
これが考える方法の1つです。
*これは認識論は合理主義(人間の理性から知識が生まれる)と経験主義(経験した事実から知識が生まれる)に分かれ、演繹法は合理主義、帰納法は経験主義に分類されるそうです。難しい。。。
次は帰納法です。たくさんの具体的事象を観察、経験し、それらから共通する項目を見つけ、結論とする考え方です。
また、よく出る例で言うと
■事象A ソクラテスは死んだ
■事象B プラトンは死んだ
■事象C アリストテレスは死んだ
観察した結果、共通項目は、「人間」と「死ぬ」ということがわかります。
なので
■結論 人間はみな死ぬ
となります。
この例だと共通項目は「哲学者」ともできるので、「哲学者はみな死ぬ」という変な結論も出てきます。
これが考えるときのもう一つです。
一長一短あり(普遍的事実が間違っていればすべておかしくなる、共通項目をとり間違えれば違う結論、変な先入観になるなど、実際は組み合わせがあったりするのですが、単純に考えるために
(A)人はどのように考えたり、いかにして知識を得るのか?=演繹法と帰納法を使って考え、知識を得て、学習する。
とします。
では次は
(B)それが生産現場(カイゼン活動)ではどうなのか?
です。
カイゼン活動の中で現場の人員はどっちの方法で考えているんだろう?ということです。
まず演繹法を使っている事例を考えてみます。
セオリー通り普遍的な事実、前提から、入っていくのですが、例えば4Sを進めるという事例です。
■前提
経営者の方々は、4Sをすることで、モノ、工具、空間など必要なものだけが、いつも決まっている状態を作ることで現場で正常、異常が一目でわかるようになる。
そして、異常(問題)がわかると、それをなくすことがカイゼンになる。
という普遍的事実、共通の理解がもとになります。
■事実
事実や現状として、自社の工場は、モノの場所が決まっておらず正常、異常がわからない。
■結論
4Sができていないから異常が認識できず改善が進まない。4Sを進めよう!!
となっていきます。
しかし、現場の人からするとその前提は当たり前の事実ではないということがこの演繹法の場合の問題になります。
(経営層の方々は自ら学習をしたり、過去の経験から4Sの普遍的事実や前提を持っている)
なので、現場の人たちには4Sの目的を理解してもらい経営層と同様の前提から結論までを学習したうえ活動を開始することが必須になります。
次に帰納的な事例です。
また4Sの事例をあげると、前提等は関係なく言われたから4S活動(何かきれいにすればよいということで)を始めます。
■事象A
完成品置き場の3定を決めてみたら、無駄な在庫作りすぎていることを見つけた。
(異常)なぜ作りすぎているのか調べると計画より多めに作る習慣があった。そうさせないように改善した。
■事象B
作業台の工具の位置を決めてみた。
しかし元の位置に戻していない作業者がいた。
観察するとある品番だけ工具を持ち替えて使っていた。
持ち替えなく良いように治具を作ると、作業時間のロスが減った。
■結論
4Sをすると異常が見つかり、カイゼンにつながる。
となりますが、帰納法によって経験から知識を得て、4Sはカイゼンにつながるという結論を出すというのは自分で気づくのを待つという方法になってしまいます。
(かなり能力に依存することになります。。事象から自分でこんな発見をして学習することは稀に感じます)
なので、(B)それが生産現場(カイゼン活動)ではどうなのか?ということに戻ると、演繹法では前提を説明する必要があり理解してもらったうえで、初めて活動ができる。
しかし、現場の人にとっては、頭で学習したが、手を動かしたときに実際にその結論になるかはわからないまま始めることになる。
帰納法は実際に経験から学習するので一旦発見すると、自分の中で強い前提(知識)ができる。
(成功体験による知識が根付く)
しかし、自分で気づくことができる可能性は低い。
(こちらの学習の方が自分の経験が伴うので強い)
となります、、、すごく強引ですが。
じゃあ、どうすれば良いのか?
(C)工場で学習が進み、知識が根付くためには?
というところを考えていきます。
今までの話で重要なことは
■演繹法での学習では普遍的な前提を持っていなければならない。
■帰納法での学習は経験から発見する力が必要になる。
この2点だと思います。
どちらか1つだけでは知識は根付いていかないということがわかってきました。
(根付く確率が低い)
じゃあこの2つを合わせたサイクルをどう作ってあげるかが、学習が根付くヒントになりそうです。
この二つを組み合わせて進めないといけません。
1.カイゼン活動を始める際に共通の前提(活動の目的、異議)を伝えて、だからこれをやるんだよということをメンバーの前提にする。
2.実際に手を動かし始めたときに、経験から1と同じことが発見できるでしょう?と発見から知識になるようにサポートしてあげる。
(1で目的や前提を伝えたからと言って放っておいてはいけない)
2つの学習方法が同時に良い方向に行かず片方が否定されてしまうと前に進みません。
例えば先ほどの4Sの話で言うと、しっかりとメンバーに前提となる考え方を伝えて活動をスタートします。
しかし、実際にアクションしたときに伝えてもらったはずの前提、事実、結論(演繹的に学習したもの)を経験(アクションした結果)から発見することができず、きれいにしてもカイゼンにつながらないという自分の経験から結論を出してしまうということです。
(こうなると前提となる4Sの考え方がその人の中で否定される)
こうなると進まないのではないかということです。
なので、今日の結論として重要なことは実際に新しい活動の意義を話し手を動かし始めたときに放っておかずに、すでに成功体験のあるリーダーや管理者が絶えず確認する。
そして当人に問いかけで発見を促したり、当人は気付いていない効果をほめてあげる(きれいにしたおかげでこんなことが分かるんだよ。今までは見えなかったでしょう?)ということが活動から学習が持続するためには必要だということです。
(それが自分の中で知識になり、今後も使え、教えれるものになる。)
新しい活動を始めたときに、その行動の結果、経験からの発見を促し、成功の経験にしてあげることはセットでやることが求められます。
(担当を決めて、時間も頻度も決めてする)
そうでないと、どれだけ活動開始の時に目的を理解してもらったと思っても自分の経験をもとに、やりたいこととは逆(改善につながらないという結論)になり、続かない。となってしまうのではないのでしょうか?
最初の問いに戻ると、
現場のリーダーたちはどのように考え、学習し、自分で使える知識となりそして、部下に教えれるようになっていくのか?を考えるヒントは、カイゼン活動の目的を説明し実施するだけでなくアクションの後に適切なフィードバックをもらえるようにするか(帰納的学習を助け、経験から学ぶように仕向ける)を仕組みにできるかということにありそうです。
そして自分としてもそれを手伝うことによってカイゼン活動の習慣化に貢献できるのだと再認識しました。
本日は抽象的な話を大変長々と書きましたが、今後の活動へのヒントが見えた気がします。
最後までお読みいただきありがとうございました!