<TPS>工場における悩みの種「在庫」-在庫をどう考えますか?

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今回のテーマは在庫をどう考えますか?です。

生産に携わる者として工場で働いていると、やはり在庫というのは日々意識し、頭を悩ませるものの一つだと思います。

トヨタにも在庫はもちろんあります。
(ないんでしょ?と聞かれることもありますが)

在庫には3種類あり、ここまで徹底的にルールを決めて管理するのか・・と新人の時に驚きました。

私がトランスミッション工場で働きだして以来、もう、毎日、毎日、毎日、、、

在庫という言葉が飛び交っておりました。。

在庫という言葉を聞かなかった日は1日もなかったのではないでしょうか。

本日は、トヨタ時代を振り返りながらどのように3種類の在庫とどのように管理をしていたかについて経験に沿って書いていきたいと思います。

工場の製品によって違いはありますが、何か、皆様の在庫低減活動や在庫管理のヒントになればうれしいです。


私は入社してすぐに、工場の生産管理部に配属されました。

生産管理部は製品ライン(製造課)ごとに、担当が分かれております。

そのライン担当は、製造課の生産計画、部品発注、稼働管理、切替管理物流(外注部品納入、完成品出荷、工場内の運搬)が仕事の範囲となります。

現場は2直稼働で、私たちは常昼(8時〜17時)です。

1日の仕事の始まりは昨日の稼働状況の確認から始まります。

いろいろな工場でお客様と話していると、トヨタは自動化された未来の工場のような
イメージを持たれておりますが実際は、かなりアナログです。
(自動車車両工場はもう少し、システム化が進んでおりますが)

毎朝、製造現場の朝会広場に行き、現場がホワイトボードに書かれている生産実績、出荷実績、停止状況、残業を直接メモしていくことからスタートしてました。

その計画と実績を確認した後、在庫置き場に行き、数量が正しいかどうかを見に行きます。

生産実績-出荷実績が在庫の増減量となるのでその増減量が正しいかどうかを地道にチェックします。

そして午前中には稼働状況について上位層に報告をするという流れです。

先ほど在庫確認と書きましたが、トヨタでは在庫を3種類に分けて管理しております。
(かんばんで管理)

① 非常手持ち
② ストレージ(店)
③ 先行品

完成品在庫は以上3つのどれかに分類されないといけません
(抜け漏れはあり得ない)

それ以外の在庫が現場で見つかると、現場の責任者や生産管理担当は、それはもう、驚くほど怒られます。(ルールを守れていないので)

そしてその在庫管理ルールというのは、工場長や各部長までの承認を経た書類、法律文のようなものがあるので、新入社員はまず在庫の考え方を読み込み、現場と生産管理の在庫管理分担ルールを頭に入れて、仕事を始めるのです。

では在庫の種類と管理方法の簡単に説明をします。

① 非常手持ち

■ 管理者 製造部
■ かんばん発行 製造部
■ 置き場管理 製造部
■  使用権限 課長以上の許可
■ 使用用途 製造起因によるラインストップの場合に使用

一言で言うと、製造部の実力を示す在庫となります。

ラインが止まっても、俺たちはこの在庫がなくなるまでには問題解決できるんだ!という実力です。(ライン復旧可能時間分)

1日分持っているところもあれば、0.5直分しか持っていないところもあります。

この量は、ラインの実績を反映し、製造部内で決められますが、やはり他ラインと比較されるため、たくさん持っている課や部は上位層から問い詰められます。

毎月生産台数は変わるので在庫量も毎月変わります。

1000台/日と500台/日では1日分の量というのも変わります。

基本的に、トラブルがなければ動くことのない在庫となります。

もし生産で異常が起こっているはずなのに現場の朝会の情報に上がってこない場合、非常手持ちの入出庫実績を見れば、こっそり在庫を使っていないかどうかわかります。

② ストレージ在庫

■ 管理者 製造部
■ かんばん発行 製造部(仕掛けかんばん)
■  置き場管理 製造部・技術員
■ 使用権限 随時使用
■ 使用用途 完成品を物流課が引き取りに来るまで置いておくため

製造部が完成品を生産、梱包し終わったものがたまっていく、ラインに直結した場所をストレージと呼びます。

そこにある完成品の数がストレージ在庫となります。

ラインと直結しているため完成品のコンベアが行き着く終点です。

なので、どのラインも置き場の量というのは数量が決まっています。

ラインを新設する際に、
生産台数の能力(何秒で1台できる)
1日何回物流が引き取りに来るか?
何分に1回引き取りに来るか?
お客様の引き取りのばらつきをどれだけ許容可能にするか?(通常は計画に対し±10%で計算)
製品は何種類か?
梱包パターンは何種類か?
出荷先はどれだけあるか?

などの前提を考慮し、どれだけストレージに完成品在庫は必要であると計算し
(最大値と最小値)それに合わせて、どれだけ置けるようにするかを決めます。

出荷が少なくなり、ストレージがいっぱいになるとラインは止まってしまうので、ストレージに置ける量と基準のストレージ在庫量というのは違う数になります。

製造課はここの数量を見ながら、今日の残業をどれくらいするか決めます。

ちなみストレージ在庫はライン直結なので他の2種類の在庫と違い、リフトでの運搬は不要です。

基準値までは、生産、出荷を円滑に回すために必要な在庫といえます。

③ 先行品

■ 管理者 生産管理部
■  かんばん発行 生産管理部(先行かんばん)
■ 置き場管理 生産管理部
■ 使用権限 生産管理部
■  使用用途 生産能力を超える高付加に対応するため

生産管理部では、中期の計画(3年分)や月次の計画(3か月)を立案するのですが、お客様(世界中の車両工場)からオーダーが来るので、生産能力が不足する月とそうでない月が発生します。

その負荷が高い月に向けて、負荷の少ない月に在庫をためて乗り切るというのが、先行品です。

これを生産するためには先行かんばんが必要で、先行かんばんは製造現場には渡してはならず、物流課に渡します。

あくまでもお客様のオーダーに紐づいている注文であり、出荷先が生産管理部という扱いです。

物流課はかんばんの数だけ、普段の出荷と同じように製造部のストレージから完成品を引き取っていき、製造現場に渡さないのは、在庫をいつでも作っていい権限を渡してしまうことになるからです。
(作りすぎのムダを生んでしまうのを回避するため)

在庫計画というのも直単位で管理され毎日、計画から外れていないかをチェックします。

そして1日分まで、物流課に渡してよいというルールです。

1か月分まとめて渡すのも物流課と製造課によって作りすぎのムダを生んでしまう原因になりますし、計画変更に対応できなくなるというのを回避するためです。

この先行品は生産計画に組み込まれており出荷計画+先行計画=生産計画となります。

厳密には生産計画という表現はなく、出荷内示と先行計画です。

引き取られた分だけ作るというのが基本なので、生産計画に合わせて作るわけではないということからそう呼ばれています。

現場が一日に来るかんばんの量を確認し、その量を生産するというのが生産現場の本来の流れです。

以上の3種類となりますが、どの在庫を見に行っても、区画線、置き方、種類、量が整備され、毎日更新されます。(先行品は生産管理部が運用します。)

生産数-出荷数=差(在庫の増減)

これがどの在庫の量の増減になっているかが一目でわかるようになっています。

やはりすごいと思うのは、そしてこのルールは現場すべてに浸透しているということです。

現場にとってもラインを止めてしまい、すぐ復旧することも分かっている場合、非常手持ちを使うのは非常に面倒です。

上司である課長に、原因を説明して初めて非常手持ちを使えます。

さっき作った先行品をこっそり使うこともできますし、その方が楽のはずです。

新人の自分も使っていいですよと言ったりしていました。

しかし、

そんなことは必要ないよ!
このルールに沿って運用していました。

在庫で悪さが隠れるということが一番悪いということが、徹底的に浸透しているんだなというのを痛感した出来事でした。

かなり長々と書いてしまいました。

また別の機会に在庫についてをテーマに書きたいと思います!

本日言いたかったことは、ひとまとめに在庫と呼んでいるものにも種類とその使用目的があります。

すべての在庫数量に根拠があります。

在庫低減活動を行う前にひとまとめにして在庫とせず、使用用途と責任を明確にし、現状の数量、本当に必要な量を考え、その差を埋める活動にしていければよいなと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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